パナホームの小屋裏換気と重要性

変態です。

小屋裏換気というのは皆さんご存知の通り屋根と2階天井の間の空間、所謂「天井裏」の換気の事です。

小屋裏換気の目的

ざっくりと大きく以下二つの目的があります。

「木材などの構造材や各種ケーブル等の劣化を防ぐ」住宅の劣化対策
「屋根から伝わって来る」熱の緩衝

 温度変化の激しい屋根の温度を一旦この空間で受け止める事により、2F室内への熱の伝わりを「緩衝」する大きな「温度緩衝室」とも言える役割があります。雪国の方だと解りやすいと思いますが、「風除室」といいますか、大型ショッピングモールなどの出入り口にある「カート置場」的な役割ですね。(正確には多少違いますがイメージとして捉えて下さい。)空気は熱伝導率が低いので、空間を取ってやるだけで立派な断熱材となります。

 とはいえこれは「外断熱」即ち「屋根断熱」の場合には必要無い(とされたりそもそも取れない)空間です。内断熱でも「陸屋根」などのフラット屋根や、変態家の様な「勾配天井」になる様な場合には…この屋根裏空間が少ないため、いくら断熱しようとどうしても屋根からの熱の影響を受けやすくなります。
 (ちなみにパナホームは基本的に2F天井を断熱する内断熱です。)

 小屋裏の温度は夏のさなかだと60℃にも70℃にもなると言われています。これは炎天下の車のダッシュボードレベルの温度で、いくら天井で断熱してもこの熱量があれば、どうしても2Fが暑くなってしまいます。またあるシミュレーション結果では天井断熱の場合、断熱材が多く断熱性能が高いほど小屋裏の温度が上がるという結果になっています。(室内側への熱の移動が抑えられるからでしょう)。
 このため十分な小屋裏換気が行われないと、「蓄熱空間」となってしまい夜間には外気よりも小屋裏温度が高い逆転現象が起こりやすくなります。結果、2F室内においても外の方が涼しいなんて事にもなりえます。
 
 他にも温度の高い空気は水蒸気を多く含む事が出来るため、2Fでエアコンを稼働したり、夜間になって外気温が下がると小屋裏の空気が冷やされることにより結露し、小屋裏や2F天井を傷める原因となります。

 以上の様に、小屋裏換気は室内の換気と同じくらいとても大切な換気となるのですが、建築基準法に於いては小屋裏換気の有無、換気量についての規定はありません。

小屋裏換気の方法

なかなか目が届きにくく、メンテナンスのしづらい場所のため、基本的に「自然の力だけを利用した方法」即ち、風や温度差による上昇気流を用いた換気方法を取っています。そのため低い位置に吸気口を、高い位置に排気口を設けるのが理想となります。

吸気

軒下/軒先
 周囲を見回してみると、軒裏に音楽室の壁の様なパンチングの開いた軒天材が使用されているお宅が多いと思います。雨がかかりにくく、屋根の一番低い位置なのでここから吸気しています。

排気

棟換気
 切妻などの一番高い場所「大棟」部に少し高くなった小さい屋根の様な物を付けてそこから排気します。メリットはなんといっても一番高い位置に排気口があるため、換気性能だけで見れば最も効率的な位置です。デメリットは強風などでの雨漏りが怖い事。事前に発見する事はまず不可能のため、漏れて初めて解ります。

妻換気
 切妻であればこの換気方法が取れます。
妻側の一番高い位置あたりに換気口を設けます。軒での吸気をせずこの位置だけで吸排気を行うパターンもあります。これも同様で、棟換気に比べれば雨漏りのリスクが低いですが、妻側の軒(ケラバ)の出が短かったり、横殴りの風雨の場合は雨の侵入を防ぎきれない場合もあります。

軒換気
 先の吸気と同じく、排気も軒で行うタイプです。小屋裏上部に溜まった空気が出ていきづらく、換気量も上二つに比べると圧倒的に低くなります。開口面積をできるだけ広く取るくらいしか換気量を上げる方法がありません。やはり「吸気口より排気口が高い位置にある」というのが効率的には一番ですね。

パナホームの小屋裏換気方法は?

パナホームはというと「太陽光発電システムと煙突」でも触れましたが、象徴ともいえる煙突が「棟換気」に近い役割を果たしているため、非常に効率的な排気設計であると言えます。勿論「雨漏りしない」施工をされる事が大前提ですが。
 では吸気はとパナホームの軒天を見ても、吸気口の穴が開いた箇所は無いと思います。パナホームの場合は「軒先換気」になっており、軒先と雨樋の間に小さな換気口が沢山空いておりそこで吸気を行うそうです。残念ながら変態家の工事中の写真も、公式の画像も見つかりませんでしたが、排気口がしっかりと煙突で用意されているため吸気口は低い位置に穴さえ開いていれば勝手に吸い込んでくれるという仕組みです。

 変態家の様に「煙突レス」なパナホームの場合どうなるの?って事で再度パナホームの中の人に確認してみました。

・煙突が無い場合、軒先換気のみ
・必要な換気量(劣化対策等級を満たす)は保たれる様に計算している
・換気量としては煙突のある場合に比べると不利

 フラット35などでは、住宅性能評価の劣化対策等級が条件に含まれています。換気方式ごとに換気口の開口面積に規定値があるのでそれを満たしているのは間違いないです。

まとめ

パナホームに1年住んでみて。快適さはどうだった?」でも触れましたが、実際に煙突レスのパナホームに住んでみた実感としては小屋裏換気量は十分と言えないと感じます。
 執筆現在の7月下旬、26℃くらいに空調された1Fから階段を上り閉め切った2階に行くと…階段真ん中くらいから「温度の壁」を感じます。2Fは昼間使う事が無いので唯一光がよく入る書斎掃き出し窓は遮光カーテンを閉めっぱなし。(効率を求めるならよしずやオーニングなどを窓の外側に設置するべき)

 7月下旬 22:00 外気30℃前後 1F(空調)26℃ 2F(窓閉めきり空調無し)32℃

 これくらいな日が多いですね…昼間から窓を少し開けておくと30℃くらいで収まります。これでも呼吸の道タワーで1Fの空気が2Fに送られているはずなので多少マシなはずなのですが…ここで窓を全開にしてサーキュレータなどで全力排気すると外気温までは急速に下がります。
 夏が苦手で少しでも2Fの暑さをマシにしたい!と思われる方はパナホームの煙突を是非採用して下さい。2Fの軒を十分に取り、勾配天井や南下がり片流れ屋根なども出来るだけ避けた方がよいでしょう。
 それでも夏は暑いと思います…こればっかりは仕方ないですね!

補足)
 北側の目立たない部分に付ける場合が多いせいもあるのでしょうが、公式の写真ではことごとく煙突が写っていません。2016年あたりからパナホームでも1種換気を採用したモデルが増えてきたため、このまま2種換気と煙突を無かったことにしてしまう可能性すら感じます。世間での評価は芳しくないかもしれませんが、変態的には非常によく考えられたシステムだと思いますので、パナホームにはこの独自路線を突き詰めて欲しいですね。

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